あおばくんのあたまん中 vol.4

〈取材・編集・構成・写真〉 大石倫子

 

 

[vol.1 演劇との出会い]

[vol.2 演劇でしか出来ないこと]

[vol.3 ストーリー以外の楽しさ]

 

 

vol.4 Cygとの出会い

 

 

しみず: 「ホープモアホームレス』が大学2年生の夏ということで、その後も、「劇団かっぱ」さんで活動していたんですよね。コンスタントに脚本は書き続けてたの?

 

あおば:僕がいた頃は、脚本はほぼ僕が書いている状態でした。

 

しみず: なるほど。3年の夏に引退ということでしたけど、引退せずにっていう選択はなかったの?

 

あおば:実は、「劇団かっぱ」では、いつ頃からか引退制度っていうのがあるんです。

 

しみず: え、3年の夏で強制引退みたいな感じなんだ! 2年とちょっとで引退とはけっこう早いね。

 

あおば:強制引退と言ってしまうと、なんか強引な感じになりますが、3年の夏以降は研究や論文や就活で忙しくなる人が多くなるので、そこで一区切りつける形です。

 

しみず: そこから自身の活動について色々と考え出したんだ。で、青葉くん自身が主宰の劇団を作ったということですね。『劇団せのび』ではなくて、『演劇ユニットせのび』っていう名称はどうしてなの?

 

あおば:劇団っていうとなんだか怖いな、というのがありまして。劇団になると、その劇団の中で、色んなことを全てまかなっちゃうような気がするんですよね。

 

しみず: 確かに、舞台美術や照明や音響や衣装なども含めて、全部を劇団内でやっているイメージはあるかな。

 

あおば:演劇ユニットであれば、「この作品を一緒にどうですか?」ってよその人も、気軽に呼び込めるかなと思いまして。『劇団かっぱ』の時にはできなかった、やりたいことをやる!ってことを考えると、こういうスタンスの方が、色々なことに手を出せるんじゃないかなと。

 

しみず: それで、今年の春くらいに、その新しく立ち上げた『演劇ユニットせのび』として、旗揚げ公演をしたんだよね? 僕も観に行きました。

 

あおば:ありがとうございます。『E-pAck』というタイトルが付いていたのですが、3つの劇団が集まった公演だったんです。『演劇ユニットせのび』では、『なくなりはしないで』という作品を上演しました。

 

しみず: 『風のスタジオ』のチャレンジ企画でもあったんだよね? 各劇団がそれぞれ、短めの作品を公演するっていう。

 

 

2016年4〜5月に開催された「E-pAck」

「バーニーズ・マウンテン・ドッグ」「劇団しばいぬ」「演劇ユニットせのび」の3団体で開催。せのびはこれが旗揚げ公演となった。

 

しみず: 脚本を書くときは自分の思考が如実にでるということだったけれども、この『なくなりはしないで』という作品では、どう反映されたんですか?

 

あおば:少し言いにくいことなのですが、最近、自分の祖母がちょっと認知症が入ってきてまして。そういう時期に書き上げたこともあって、おばあちゃんの認知症の話になってしまったんです。ほんとは違う脚本を書こうと思っていたんですけれども…。そうなってしまいました。

 

しみず: やっぱり自分の状況が反映されたということなんだね。

 

あおば:おばあちゃんがだんだん物忘れが激しくなってきて、自分のことも忘れられちゃうのかなって思ったんですよね。あと、前々から僕の頭にあったことなんですが、戦争とか震災とか大きなことも時間が経つと風化しちゃったり…そういうのと、なんだか重なりまして。そういう大きな話を、おばあちゃんと孫っていう個人的な話に、無理やり結びつけてみた作品なんです。

 

しみず: 僕が観て面白いなと思ったのは、それぞれのキャラクターに『忘れていく人』とか『忘れたい人』とか記憶に関したものを、当てていたよね? キャラクターとしてその役割を担っているのが、ぜんぶ自分を見ている感覚で、不思議で、良かったんだよね。

 

 

「なくなりはしないで」キャスト紹介。村田青葉の手描きによる。

 

あおば:それは意識的にやってみたことなんです。何かの現象や状況をキャラクターに置き換える、そういうのは演劇でしかできないかなと思って。

 

しみず: もちろん、青葉くんが取り入れている、前のシーンと次のシーンのセリフをつないでいく感じも、かなりでてきたよね。

 

あおば:そうですね。かなりシーンの切り替えが多くて、前のシーンの出演者が残ったまま、次のシーンになるような演出をしたりしましたね。

 

しみず: この『なくなりはしないで』が旗揚げの作品ということで、注目もされていたと思うけれども、手応えとしてはどうでしたか?

 

あおば:盛岡では、あんまり観られないタイプの演劇をやるぞ!って決めてまして。チームのみなさんには、「大すべりするかもしれないです、すみません」という話をしてあったんですけれども。思ってたよりもみなさんに評価していただけたので、驚きの方が大きかったですね。

 

しみず: そんな心配してたんだ。ちょっと意外。しかもこの旗揚げ作品が、市民演劇賞の戯曲賞に選ばれたんだから、すごいよね。

 

あおば:おかげさまで、ありがとうございます。審査委員の方からは、「これからも若者らしい作品を作ってください」っていう講評をいただいてますね。

 

しみず: 話題として僕の周囲では「せのびすごかった!」ってみんな言ってましたもん。それで僕がTwitterに「せのびがよかった〜」と書き込んだら、リプライをくれたんだよね?

 

あおば:公演の後に、エゴサーチをしてたんですよ。まず大事なのは顔を覚えてもらうことだなと思っていたのと、とりあえず「せのび」という名称も覚えてもらいたくて。

 

しみず: そうだよね。これからスタートという状況ではとても大切ですね。

 

あおば:せっかく一回観て「良かった!」と思ってもらったのに、日が経つにつれ忘れられるのも嫌だなと思って。積極的にアプローチを仕掛けようと。それで、感想を書いていてくださっていた皆さんに「ご来場ありがとうございます。今後も宜しくお願いします」というリプライを送ったんです。

 

しみず: そうでした。青葉くんが律儀で面白いなって思ったのは、僕が公演前からとっくにあおばくんの事をフォローしていたんだけど、リプライくれたとき「今までフォローしていただいていたのに、気がつかなくて申しわけありませんでした」って書いてあって。

 

あおば:あはは(笑)謝りましたね!

 

しみず: でもさ、Twitterってそういうもんじゃないかなぁと僕は思ってるから、なんか変わった人だなと、可笑しく思っていました。

 

あおば:いやぁ、一応、気になったもので!

 

 

Cyg art gallery 代表・清水真介

 

あおば:疑問なのですが、Cygさんで、なぜ演劇の要素を取り入れようと思ったんですか?

 

しみず: この Cyg art gallery は、まずギャラリーなので、今までは美術作品の展示販売がメインです。ただ、9月のコンテンポラリーダンサーの山手清加の第2回の公演は決まっていて、そういうパフォーミングアーツというものにも興味があって。そこからなだらかに続くように演劇に関する企画をしてみたいとCygの会議で僕が提案していたんです。「Cygは演劇の方向も観ているし、調査しているんですよ」というところをアピールしたいなと思っていたんです。

 

あおば:それは嬉しいことですね。

 

しみず: あと今年の10月に『架空の劇団』さんが『お寺三部作』の公演をすることが決まってたんですね。

 

あおば:清水さんが舞台美術、手がけましたよね。

 

 

架空の劇団 寺シリーズ三部作一挙上演「寺3」舞台美術:homesickdesign

 

架空の劇団…1990年旗揚げ。毎月新作を上映する「一月一本勝負」やアゴラ劇場大世紀末演劇展への参加等、精力的に活動するも1996年解散。架空の劇団という名前を消してしまうのが惜しく、2001年復活。寺で結婚話を描く「お寺シリーズ」や、産婦人科のロビー、保育園などを舞台とする、生活に根差した作品を得意とするくらもちひろゆきと、詩人をモチーフにした「月下の一群シリーズ」のほか、歌人や歴史上の人物などが登場する作品を得意とする盒饗鵑砲茲襦劇作家2人体制。 http://kakoo2001.wixsite.com/kakoo2001

 

 

しみず: そうです。舞台美術や宣伝美術は、Cygとしてではなく僕のもうひとつの仕事であるデザイナーとしての屋号で行っています。その話し合いのときに、『架空の劇団』の代表であるくらもちひろゆきさんから「Cygで架空の劇団の展示をやりたいんだよね」という相談されたんです。

 

あおば:演劇を展示する、そういうスタイルは珍しい試みですよね。

 

しみず: そう、演劇公演はイメージつくけど展示かぁ、と悩みました。どうやって収益を上げるかということもありましたし。結果としては、架空の劇団の豊富な公演歴とその映像の上映会を行うことでバランスをとりました。

 

あおば:そのへんの調整は難しそうですね。

 

しみず: 収益の調整は仕事なのでとにかくやるしかないので大丈夫なんだけど、、、。実はCygとして、盛岡の文化として定着している演劇を、どう見せていけばいいのか、どう取り組めばいいのかが、まったく分からなかったんです。今も分からない!

 

あおば:分からないけど、やりだしたんですね?

 

しみず: 『架空の劇団』の件もあるし、青葉くんとのTwitterでのやりとり、その前の様々な演劇関係者とのつながりの流れもあって、このタイミングで何かできるかも?と。勘ですね。

 

あおば:なるほど。

 

しみず: そうして奮起して、演劇関係者で、僕が興味がある数人に話を持ちかけてみたんです。青葉くんがその一人だったというわけです。Cygで何かしてみませんか?一度会いませんか?みたいな感じで連絡したよね。

 

あおば:はい、びっくりしました。それが今年の6月くらいでしたね。

 

 

 

〈つづく〉

 

 

 

 

演劇ユニットせのび 第2回公演
『どこかの国のアリス、あるいはなんとかランドのピーターパン』

Cyg art gallery

 

2016年
11月3日(木)14:00-
11月3日(木)18:00-
11月4日(金)19:30-
11月5日(土)14:00-
11月5日(土)19:30-
11月6日(日)11:00-
11月6日(日)15:00-
※開場は各30分前 ​※上演時間は100分程度を予定

 

チケット:

学生1,000円(当日1,300円) 
一般1,500円(当日1,800円)

Cyg art galleryにて販売中

 

企画:シグと村田青葉

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