あおばくんのあたまん中 vol.2

〈取材・編集・構成・写真〉 大石倫子

 

 

[vol.1 演劇との出会い]

 

 

vol.2 演劇でしか出来ないこと

 

 

しみず: 東京に演劇を観に行くようになった、ということだけれども、東京にはそれこそ無数に劇団ってありますよね。観に行く劇団はどういう風に選んだの?

 

あおば :一番最初に外へ演劇を観にいったのが、先ほど話した「サマータイムマシーンブルース」を上演した『ヨーロッパ企画』という劇団で、京都まで観に行きました。それが一年の夏くらいですね。あとは、一年の冬に、高校の先輩で演劇活動をしている方から、東京の舞台でエキストラと手伝いをしてくれないか、という話をいただきまして。東京に1、2ヶ月くらい滞在していたんです。

 

しみず:まとまった長い時間で都市部の演劇を覗き見できたんですね、それは貴重な体験ですね。

 

あおば :そうなんです。そのとき、稽古終わりとかのタイミングで、公演をしている小劇場とかに行きました。最初は有名なところで、岸田國士戯曲賞(※1)という演劇でいう芥川賞みたいな戯曲作家にとっての登竜門となる賞があって、それを受賞した方の作品とかを最初に観て。あとはその演劇に行った時にもらったチラシの中から面白そうなのを選んで観たり。一回行くとそういう風にどんどん情報が入ってくるんです(※2)

 

(※1)岸田國士戯曲賞…劇作家・岸田國士の業績を顕彰するとともに、若手劇作家の育成を目的に白水社が主催する戯曲賞。新人劇作家の登竜門とされ、「演劇界の芥川賞」という異名を持つが、ベテラン作家の受賞も多い。参考:wikipedia

 

(※2)チラシの折り込み…パンフレットにたくさんのチラシが挟み込まれる。その劇場やその地域で行われる演劇情報を知ることができる。 

 

しみず:その時は勉強になったという感じ? それとも圧倒された?

 

あおば :観ていたまさにその時は圧倒されていましたが、帰ってゆっくり反芻したりしてどう自分のものにしていけるかに時間をかけました。実は最初の脚本の感想を先輩方に聞いた時「演劇じゃなくてもいいじゃん」ってことをよく言われてまして。

 

しみず:小説でもいいじゃんってこと?

 

あおば :小説でも映画でもいいって言われてました。その時は、「そっかぁ」くらいにしか思ってなくて、ピンと来てなかったのですけれども。外で芝居を観ていたら、「あぁ確かに、これは芝居でしかできないな」ってことがあるんだなって感じました。

 

 

 

しみず:芝居でしかできないことって、それは例えばどういうことなのかな?

 

あおば :僕が演劇って面白いんだよって事を友人に伝える時によく話すことがあるんですけれども…

 

しみず:うんうん。

 

あおば :岸田国士戯曲賞受賞者のノゾエ征爾さん作・演出の「サニーサイドアップ」という舞台での演出なのですが、主人公の父親が癌で余命が短いという話をしていた後に、天井から物がドサって落ちてきて、実はそれを広げると喪服なんですよ。主人公がその喪服を着た瞬間に「父親が死んだ」ということを表現していている、という訳なんですが。

 

しみず:おお確かにそれは小説でも漫画でも表現できないね。いや表現しても良いのかもしれないけど、伝わりにくくなっちゃう。

 

あおば :ですよね。それまでの背景と、ひとつの出来事や行為だけで、何が起きたかセリフで言わずに表現できるんだ、ということに気づきまして。面白いなぁと。

 

しみず:面白いし、不思議だね。舞台という場所で実際その状況を目にしている方が、けっこう突飛なことが起きても人は何を意味しているか判断できるんだ。演劇にしかできないことや、演劇にしかできない体験が、演劇の面白さであるということですね。じゃあ、外で色々観たことで先輩に言われてた意味がわかったという感じ?

 

あおば :そうなんです。そこで、ようやく意味がわかったという感じでした。それ以降から、“演劇でしか出来ないこと” にこだわって、脚本を書くようになりました。ただ、実際にそれができる、というところに到るまではまた時間がかかりました。

 

しみず:自分が描きたい表現したいものに、そういった演劇ならではの表現方法をどう組み込むのか、ということだよね?

 

あおば :また一つの壁という感じでした。

 

しみず:そこから、さらに脚本作りに磨きがかかったんだね。それで『劇団かっぱ』の時に、『第1回のとうほく学生演劇祭』(※3)っていうのがあって、それで『ホープモアホームレス』という作品で、審査員特別賞を取りましたよね?

 

(※3) とうほく学生演劇祭…せんだい演劇工房10-BOX で行われる東北の学生劇団の祭典。審査員による各賞の審査、講評も行われ、優秀な成績を納めれば、京都で行われる全国学生演劇祭への出場権を得ることもできる。

 

あおば :はい、脚本も演出も、両方を手がけた作品は、これが初めてでした。2年生の夏ですね。

 

しみず:東北の劇団が集まった大会みたいだけれども、メンバーが全員学生じゃなければいけないのかな?

 

あおば :学生が主体の劇団だったら、参加可能ということでしたね。この年は7組出場していました。

 

しみず:まず『ホープモアホームレス』ていうタイトルが、すごく興味をそそられるよね。どんなストーリーなんですか?

 

2014年公演「ホープモアホームレス」メンバー。前列中央が青葉。

 

あおば :説明が難しい作品なんですが…。普通の会社員になることを夢見た主人公が、気付くとホームレスになっていた、というところから劇が始まります。そしてその町では、ホームレスを救うことをマニフェストにして市長選に立候補している候補者がおりまして、この2つが接触をして話が進んでいく訳なのですが。

 

しみず:ぱっと聞きは良い話っぽいですが、そうもいきませんよね。笑

 

あおば :はい、そうはいきません(笑) このホームレスの方々は、「やった、俺たちも人権を確保できる!」みたいな考えでいるんですけれども、市長としては、最終的には「ただこいつらを利用してやる」としか考えていない、という描き方をしました。テーマとしては、「自分たちで何も努力していない奴が、夢ばっか見てんじゃねーぞ」、みたいな話です。

 

しみず:ははは! それってどっちから見て? ホームレス側??

 

あおば :いや、市長がホームレスに、「夢ばっか見てんじゃねーよ」っていう(笑)

 

しみず:なるほどね。何も努力せずに、っていうことだよね。誰かチャンスくれないかな、みたいなね。

 

あおば :自分の脚本・演出の時って、自分の今の環境というのがダイレクトに出ちゃうんですよね。

 

しみず:ヘーーーーなるほどーーーー! 20歳の時一体何が? そういうの聞くの好きです。

 

あおば :いやぁ、東京とかに演劇を観に行っていた時期だったもので。自分と活躍している人を比べて見ていて、「何で自分はあそこまで出来ないだろう」と、その差を感じることが多かったんです。でも冷静に考えたら、「そっか、何にもしてないからだよなぁ」と思ったんです。だったら努力するしかないよなぁって。

 

しみず:そこがホームレスに投影されている。

 

あおば :ホームレスと市長どちらにも重ねていたのかもしれません。でもひとつ分かっていたことが、とにかく僕はやっぱりまだまだ力がなくて、演劇の世界にはすごい方たちが上にたくさんいるんだ、という悔しさとか憧れとか焦りとかみたいな感情があったんだと思います。

 

〈つづく〉

 

 

 

 

演劇ユニットせのび 第2回公演
『どこかの国のアリス、あるいはなんとかランドのピーターパン』

Cyg art gallery

 

2016年
11月3日(木)14:00-
11月3日(木)18:00-
11月4日(金)19:30-
11月5日(土)14:00-
11月5日(土)19:30-
11月6日(日)11:00-
11月6日(日)15:00-
※開場は各30分前 ​※上演時間は100分程度を予定

 

チケット:

学生1,000円(当日1,300円) 
一般1,500円(当日1,800円)

Cyg art galleryにて販売中

 

企画:シグと村田青葉

 

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